跳慮跋考

興味も思考も行先不明

TeX を捨てよ、LyX で書こう

「本物の物書きは TeX を使う」とは二十世紀末の著名な格言ですが(要出典)、実際問題これが中々に面倒な訳です。
TeX は随分と原始的なので、見た侭を編集できない。
少し書いてはコンパイル、どこの $ が閉じてないんだか分からない。
まぁ凡そ人間が直接書くべきではないのです。
ではどうするか。
その一つの解が GUI を備えた TeX/LaTeX 文書作成ソフト LyX です。「捨てよ」って言った割に内部で文書生成するのは TeX ですが気にしない。
使い方も分からない道具について WYSIWYM がどうのと思想を語っても面白くないので、ここでは兎に角も楽して文書を作る為の方法を解説します。

初期設定

インストールはまあいいとして、日本語で文書を作る準備です。
一先ず適当に 新規(Ctrl+N)して、メニューバーから 文書(D)→設定(S)...(以下では「文書の設定」と呼称)を開きます。
最初に〔文書クラス〕から 文書クラス(C) を選択しましょう。適当に数式交じりの文書とかレポートとかを書くならば「日本語Article (jsarticle)」で良いと思います。
次に〔言語〕から 言語(L) に「日本語」、文字コードで その他(E) に「日本語(pLaTeX) (SJIS)」*1、言語パッケージ(K) に「なし」を設定して、[文書の既定値として保存]したら[OK]。

基本操作

以上の設定をした上で何か打って Ctrl+R または 文書(D)→[DVI]を表示(V) すると、ちゃんとプレビューが出来ると思います。
タイトル・著者とか章や節などの要素は、ツールバーの〔標準〕ってなっているプルダウンメニューから挿入できます。
それに ファイル(F)→読み込み(I)、書き出し(E) の各種で入出力すれば、最低限文書作成の用途には使えるでしょう。

数式

数式は Ctrl+M で行内、Alt-M D で別行立てにて挿入されます。尚別行立て数式の後ろに文字を打つと自動的に改行されます。このとき Enter によって改行すると、そこから別の段落が始まると解釈されるので注意しましょう。
挿入(I)→数式(H) から align 環境とか gather 環境とかも勿論使えます。
また数式内では Alt-M N により数式番号の有り無しが切り替わります。
ツール(T)→設定(S)... の〔編集〕→捷径*2から他にも色々とショートカットがあるっぽい事が分かりますが、個人的にはこういう「見て分からない UI」って好きじゃないですねえ。
挿入(I)→数式(H)→マクロ により数式内で使うマクロが作成でき、これは入力するとちゃんと解釈してくれます。\R := \mathrm{R} とすると、それ以降で \R と打てば ℝ が表示されると。

定理環境

節毎に定義とか定理とか問とかの番号を振る奴です。理数系ならば必須と言えるでしょう。
「文書の設定」で〔モジュール〕を開き、選択可能のリストから「定理」*3を選んで[追加(D)]します。[OK]して〔標準〕のとこを開くと、下の方に定理とかが追加されています。
「定理(節毎連番)」とかも追加すると使えるんですが、もっと細かく*4設定できないものですかね。

初めに挿入(I)→フロート(A)→図 でキャプションとかのスペースを作ります。それで「図1:」とかの前に移動して、挿入(I)→画像(G)... からファイルやオプションを設定し画像を入れます。eps とかいう謎形式じゃなくても読み込めるので優秀です。
編集(E)→段落設定(P)... から配置の 中央揃え(E) を選ぶと図を中央に置けます。
因みに dviout で画像がモノクロなのは Option→Setup Parameters...→Graphic の GIFBMP(full color) とかにすると直ります。

相互参照

式(1) とか 図2 というのを本文に直接書くのは保守性とか文書構造を分かってない人間のやる事です。
例えば図や番号付きの数式内で 挿入(I)→ラベル(L)... を選ぶと、数式に eq:Maxwellsou とか名前を付けられます。こうしておくと、文書中にて 挿入(I)→相互参照(R)... から既存のラベルを選択して、出力ではそのラベルが付いたものの番号を表示する様に出来ます。数式の場合は 形式(F) で括弧付きを選ぶとよいでしょう。

参考文献

巨人の肩に立つって奴ですね。
BibTeX の文献データベースファイル(JabRef とかで管理すると便利)があれば、それを導入して簡単に参考文献の一覧が作成できます。
先ず「文書の設定」から〔書誌情報〕の引用様式を NatBib にします。右の NatBib様式(S) で「連番」を選ぶと [1] とか、「著者-年」を選ぶと [Sondhi, 1974] とかが選べます。
挿入(I)→一覧/目次(I)→BibTeX書誌情報... から[追加(A)]→[一覧(B)...]で .bib ファイルを指定し[追加(A)]します。様式(Y) に「plainnat」を指定し[OK]を押下。これで本文中に 挿入(I)→文献引用(C)... から引用を置く事が出来ます。

その他

他にも色々と機能がありますが、ここまでの操作で結構見掛ける事になったと思うので適当に弄ってみて下さい。
ツールバーのアイコンにも「数式を挿入」「ラベルを挿入」等があるので、人によってはそっちの方が便利かもしれません。
ヘルプの用途別説明書には xy-pic で可換図式を書く話もあるのですが、面倒だし結局邪悪なコマンドを憶える必要があるみたいですね。そんな事よりも TypeMath を使いましょう!

LyX って日本語の解説が無い訳ではないんですが、散逸していて一々探さないとなんですよね。ヘルプの文書は充実してるんですけど、長いし。
ですのでライトな TeX ユーザーが気軽に乗り換えられる程度の必要最低限な解説があれば、より良い(この場合 platex と格闘する日本全国の人々が救われる様な)世界に貢献できるだろうと思い書いてみました。
アレが書いてないなんてあり得ない! とかあったら twitter の方とかで。対応出来るか分かりませんが……。
TeX をゴリゴリ書く旧時代ワークスから一人でも多く解放される事を願って。

*1:ここで別のエンコーディングを選ぶと文字化けするのだが、どうしたものか。

*2:short cut ってまぁそういう事なんだけど何とも cool ですね。

*3:「定理」は theorem.sty で「定理(AMS)」は amsthm.sty だろうが違いはよく知らない。theorem.sty でも名前付き定理は使えるはずだが、「定理名付き定理」には「定理(AMS)」が必要と言っている。

*4:\theorembodyfont{\normalfont} で斜体になるのを防ぐとか、\theoremstyle くらいは定理環境に設定したいところですが、プリアンブルを弄っても上手くいかない気配。如何すべし。