感情モデル
感情を整理分類しモデル化したものとして幾つか有名なものがある。
エクマンの基本表情
感情自体ではなく表情(感情の顔による表現)だが、ポール゠エクマンは欧米、日本、スマトラ等の多様な文化間で「喜び(happiness)」「悲しみ(sadness)」「怒り(anger)」「恐怖(fear)」「嫌悪(disgust)」「驚き(surprise)」の基本 6 表情が通用する事を見出した。
プルチックの感情の輪
ロバート゠プルチックは 「喜び(joy)」「信頼(trust)」「恐怖(fear)」「驚き(surprise)」「悲しみ(sadness)」「嫌悪(disgust)」「怒り(anger)」「期待(anticipation)」の 8 感情を基本とし、これらの強度の違いや混合によって多様な感情を説明しようとした。
(File:Plutchik-wheel.svg - Wikimedia Commons より)
混合は正反対にある全ての感情の組み合わせについて以外についてあるとし、隣同士を一次の混合感情、一つ飛ばしを二次、二つ飛ばしを三次と呼んだ。例えば一次の混合感情は次の通りである。
一つ目 | 二つ目 | 混合 |
---|---|---|
喜び(joy) | 信頼(trust) | 愛(love) |
信頼(trust) | 恐怖(fear) | 服従(submission) |
恐怖(fear) | 驚き(surprise) | 畏怖(awe) |
驚き(surprise) | 悲しみ(sadness) | 失望(disappointment) |
悲しみ(sadness) | 嫌悪(disgust) | 悔恨(remorse) |
嫌悪(disgust) | 怒り(agner) | 軽蔑(contempt) |
怒り(anger) | 期待(anticipation) | 攻撃性(aggressiveness) |
期待(anticipation) | 喜び(joy) | 楽観(optimism) |
ただ、この 8 感情はやや統一性を欠く様に思われる。例えば信頼や嫌悪は対象が無くては成立しないが、喜びや怒りは自発的に発生しても違和感がない。驚きが持続するという事はないが、他は継続して感じ続ける事もありうる。心それ自体の志向性に拘わらない状態、という意味に於いては次がより尤もらしく思われる。
ラッセルの円環
プルチックでも対立軸が現れているが、ジェームズ゠ラッセルの円環モデルでははっきりと「覚醒(arousal)-眠気(sleepiness)」「快(pleasure)-不快(unpleasure)」の二軸によってモデル化されている。
(Russell, James. (1980). A Circumplex Model of Affect. Journal of Personality and Social Psychology. 39. 1161-1178. 10.1037/h0077714. の Figure 4)
様々な感情はこの二次元平面に乗った円環上に同定され、例えば覚醒・快ならば興奮、覚醒・不快ならば怒り、眠気・快ならば安らぎ、眠気・不快ならば憂鬱となる。(中心からの距離で感情の強度を表すとすれば円環と言うより円盤になる)
覚醒度と快は明らかに生理的な基盤を持っており、簡潔ながら説得力の高いモデルだろう。